使用素材 PTFEの事例
以前までベークライト製治具を使用していたが、使用中に異臭が発生するため解決できる素材で作り直して欲しいというご相談です。
異臭の原因
実際に使用していた治具は焦げ付きが発生していました。
治具の使用時に摩擦による熱で、ベークライトの連続使用温度を超える高温状態になっていたと考えられます。
熱硬化性樹脂であるベークライトは、連続使用温度を超えても溶けることはありませんが、焦げ付きが発生します。
この焦げた時の匂いが今回の異臭の原因であったと推測されます。
PTFEへの材質変更で摩擦による問題を解決
使用用途から、該当の治具は摩擦と高温状態になることを考慮した摺動性と連続使用温度の高い素材に変更することが適切だと考えられます。
治具のすり減り具合からも、匂いだけでなく摩耗により精度の悪化も懸念されたためです。
そこで今回はPTFEでの製作を提案させて頂きました。PTFEは耐熱性・摺動性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。連続使用温度は約260℃と高く、難燃性であるため燃えにくく自己消火性があります。摩擦係数が小さく、摩耗しにくいため摺動部品などに利用されます。
強度面についても十分であるということで採用して頂き、匂いの発生と治具精度の悪化を防ぐことができました。
【お客様の声】
候補素材について丁寧にご提案いただき、ありがとうございました。
色々な樹脂素材を扱っているということで、アドバイスも納得の行くものでした。
適切な素材を選ぶことができました。
(製造業/広島県)
まとめ
この事例では摩擦と耐熱温度の2つが課題でした。今回は他の条件などを考慮しPTFEを選定していますが、実際には摩擦に強く耐熱温度の高い素材は他にもあります。ベークライトのようなフェノール樹脂にも高摺動性の素材があり、他のエンジニアリングプラスチックにも摺動性グレードが存在するものもあります。
ちなみに、ベークライトの通常グレードの難燃性はUL規格だとHBに相当します。これは燃えにくいですが、自己消火性はないことを示しています。今回のように摩擦により焦げ付きが発生するような環境で使用を続けていると、発火した恐れがあります。自己消火性がないためそのまま燃え広がり火災に繋がるリスクがありました。ベークライトにはUL規格でV-0に相当する難燃性を持った難燃ベークライトが存在します。こちらは燃えにくく自己消火性を持った材質で、PTFEと同程度の難燃性素材です。今回は摩擦とそれによる摩耗が別の問題を発生させていることも判明したので、これらの問題を解決できる素材を提案させて頂きました。
湯本電機では、お客様のご予算などの条件に合わせての材質・加工方法変更や設計変更提案といった「込み入った案件」を得意とします。まだ具体的に決めることができていない、といった案件でも完成までご相談頂けますので、お気軽にお問い合わせください。
今回の提案事例内のプラスチック素材紹介
ベークライト
耐熱性・機械的強度に優れた汎用的な素材です。硬度が高く引張強度に優れますが、衝撃による欠けや割れが発生しやすい側面もあります。フェノール樹脂と基材(紙や布)の積層板であり、基材部分は摩擦に弱く摩耗しやすい特性があります。
PTFE
摺動性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。連続使用温度が260℃と高く、引張強度・耐衝撃性にも優れています。膨張率が高く、温度による寸法変化が起こりやすい材質です。
樹脂加工・プラスチック加工は湯本電機にお任せ下さい。
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