使用素材 PPSの切削加工事例
食品製造工場で使用している製造機械に不具合が発生しており、その原因がPTFE製のプラスチック部品が温度変化で寸法変化しているためだと判明しました。依頼時点では寸法安定性に優れたPEEKでの切削加工を希望でしたが、予算内で、できるだけ安く本件の部品を入手したいという相談でした。
PTFEで製作した部品が寸法不安定であったのは、PTFEの線膨張率が大きいためです。プラスチックは金属と比べると線膨張係数が一桁大きい素材です。PTFEなどのフッ素樹脂はその中でも線膨張率の大きい素材であり、機械加工や検査を行う環境では適切な温度管理を行う必要があります。PTFEは温度での寸法変化が起こりやすい材質ですが、吸水率はほぼ0%であり、吸水による寸法変化は起こりにくい材質です。
PEEKで製作する場合の課題
PEEKはプラスチック素材の中で、あらゆる面で高機能を発揮する熱可塑性樹脂です。
スーパーエンジニアリングプラスチックの代表格で、高い強度や耐熱性に加えて耐薬品性などが求められる場面で使用されます。
PEEKには食品安全性に適合したグレードもあり、耐熱性・高温耐性・機械的強度などに優れています。
しかし、すぐれた性能を持つ反面、その分材料費が高いという側面もあります。
今回の部品の加工内容では、PEEKを使用すると予算を超えてしまうことが課題でした。
PPSへの材質変更提案で予算内での製作を可能に
サイズと形状、数量の条件により加工方法を変更することでのコストダウンは難しい状況でした。
そこで、ご相談時に頂いた部品の使用環境と部品の要求スペックから材質変更によるコストダウンを図ることにしました。
今回は高温環境で連続使用できること、吸水・吸湿による寸法変化が起こりにくいことを条件に検討した結果、PPSで製作しました。
PPSはPEEKと同様にスーパーエンジニアリングプラスチックの1つで、優れた強度・耐熱性に加え耐薬品性や寸法安定性などの他の点でも長所の多い素材です。PEEKよりも耐熱温度は低いですが、価格はPEEKの4分の1から2分の1であるため、今回の予算内に収めながら要求スペックを満たすことができました。
【お客様の声】
ネットで拝見して依頼させて頂きました。今回初めての注文でしたが、価格・品質共に満足しています。他社にも同時に見積もりを依頼しましたが、予算内では不可という回答のみで、予算内で製作できる条件について検討してくれたのは御社だけでした。
またよろしくお願い致します。
(製造業/東京都)
まとめ
今回は寸法の安定化と予算内での調達の2つが課題でした。
予算内に収めることができたのは、部品の要件を満たすための適切なスペックの素材を見つけることができたためです。
数量1個、手のひらサイズで難形状の部品であり、切削加工の範囲内での加工方法の変更によるコストダウンは難しい状況でした。
幸い使用環境が明確であったため、予算内に収められるように加工できる適切な素材を提案することができました。
湯本電機では、お客様のご予算などの条件に合わせて、材質・加工方法変更や設計変更提案といった「込み入った案件」を得意とします。まだ具体的に決めることができていない、といった案件でも完成までご相談頂けますので、お気軽にお問い合わせください。
今回の提案事例内のプラスチック素材紹介
PTFE
フッ素樹脂の1つで、滑らかな手触りと摺動性が特徴のスーパーエンジニアリングプラスチックです。
連続使用温度が260℃程度と高く、摩耗に強い特徴から摺動部品などの素材として使用されます。
PEEK
熱可塑性樹脂の中で最高レベルの耐熱性と機械的強度を持つスーパーエンジニアリングプラスチックです。
寸法安定性や耐薬品性に優れ、難燃性の素材と多くの部品の要件を満たすことができますが、高価な材料です。
PPS
PPSは高い耐熱性に加え、耐摩耗性、寸法安定性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。
PEEKと同程度(PEEKより多少控えめ)の物性を持ちながらPEEKよりも安価です。
切削加工時にはバリが出やすい側面があるので、加工品の後処理に時間がかかることがあります。
樹脂加工・プラスチック加工は湯本電機にお任せ下さい。
短納期で高品質の樹脂加工品を大阪・東京から全国へお届けします。
湯本電機では切削加工・3Dプリントによる、様々な形状のプラスチック加工に対応しております。
対応可能な加工については「プラスチック加工・樹脂加工 加工方法一覧」へ。