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難燃性プラスチック材質の種類と特徴

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難燃性とは

難燃性とは、燃えにくく、燃えても自己消火性を持つ材質を言います。プラスチック材質の物性において、難燃性を基準に材質選定をする機会があります。金属材質と異なり、プラスチックは有機物であるため、燃えることがあります。高温環境や火の気の周辺で使用される製品や部品は、燃え広がると火災の原因になることがあり、安全性を高めるためにも燃えにくさは重要な項目です。

難燃性は、UL94規格か酸素指数で評価することができます。UL94規格は難燃グレードを低い方から順にHB・V-2・V-1・V-0・5V-B・5V-Aの6段階で評価します。V-2以上は自己消火性があり、炎が自然に消えるまでの時間の短さによってグレードが分類されます。

酸素指数は、材料が燃焼する傾向をJISによって定めた指標です。材料が燃え続けるために必要な酸素濃度を数値で表しており、この数値が高いほど難燃性が高いと評価します。

難燃性グレード

難燃グレードの判定基準

HBは水平燃焼試験によって判定します。規定の大きさの試験片を地面に水平に固定し、もう一方の端に長さ20mmの炎を30秒当てます。そして、炎を離した後も燃焼を続けた時の燃焼速度により判定します。試験片の厚みが3mm以上で燃焼速度が40mm/min以下の結果と、試験片の厚みが3mm未満で燃焼速度が75mm/min以下の結果はHBと判定されます。

V-0/V-1/V-2の認定基準

V-0/V-1/V-2は垂直燃焼試験によって判定します。試験片の下端に長さ20mmの炎を当て、30秒以内に燃焼が止まった場合、さらに10秒間炎を当てます。この2回の試験による燃焼時間の長さと周囲への反応でグレードを判定します。

認定基準燃焼グレード
V-0V-1V-2
試験片の燃焼時間10秒以下30秒以下30秒以下
2回目の燃焼時間30秒以下60秒以下60秒以下
10回合計の総燃焼時間50秒以下250秒以下250秒以下
試験片の真下置いた脱脂綿へのドリップによる着火なしなしあり
固定位置までの燃焼なしなしなし

5V-A/5V-Bの認定基準

5V-A/5V-Bは、さらに厳しい条件での試験を行います。規定の大きさの試験片を地面に垂直にして、下端から125mmの炎を5秒間当てて5秒離す動作を5回繰り返します。さらに、試験片を水平にして同様の操作を繰り返します。この2回の試験による燃焼時間の長さと周囲への反応でグレードを判定します。

認定基準燃焼グレード
5V-A5V-B
5回接炎後の燃焼時間60秒以下60秒以下
試験片の真下置いた脱脂綿へのドリップによる着火なしなし
水平燃焼試験による穴の有無50秒以下250秒以下

難燃性のプラスチック材質

難燃性のプラスチックのほとんどがスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる、耐熱性を強化した材質です。以下で紹介する材質は、難燃性グレードがV-2以上の難燃性のプラスチックです。

材質難燃グレード連続使用温度
PEEKV-0240℃~260℃
PPSV-0220℃
PTFEV-0260℃
PVDFV-0140℃
PEIV-0170℃
PAIV-0250℃
PPSUV-0170℃
PIV-0300℃

PEEK(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPEEK

熱可塑性樹脂の中でも最高レベルの耐熱性と機械的強度を持つ材質です。連続使用温度は240℃〜260℃で、スチーム中での連続使用も可能です。燃焼時の発煙、有毒ガスの発生量と真空中でのガスの発生量が非常に少ない特徴があります。あらゆる物性において優れた側面を持つ一方で、他の素材よりも高価です。

PPS(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPPS

耐熱性・寸法安定性・機械的強度に優れた材質です。連続使用温度は約220℃で、難燃性の素材で燃焼時の発煙も少ない特徴があります。ガラス転移点が97℃であるため、高温高荷重の状況下では連続使用温度よりも低い温度で変形が発生する危険性があります。

PTFE(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPTFE

耐熱性・耐薬品性・耐摩耗性に優れたフッ素樹脂です。連続使用温度は260℃で、耐寒性も高く、-250℃の温度域まで機械的強度を維持することができます。酸素と結合しにくい分子構造のため、燃えにくく燃え広がりにくい難燃性の素材です。

PVDF(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPVDF

加工性と誘電率に優れたフッ素樹脂です。連続使用温度は140℃で、耐熱性と耐薬品性はPTFEに劣りますが、汎用樹脂よりも機械的強度と耐候性に優れることからさまざまな用途で利用されています。

PEI(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPEI

非結晶性樹脂の中で耐薬品性が最も優れた材質です。連続使用温度は170℃で、高温下での劣化が起こらず、スチーム・熱水にも耐性があります。広い周波数範囲内で優れた絶縁性と誘電特性を発揮します。

PAI(難燃グレード:V-0)

難燃性プラスチックPAI

連続使用温度が250℃で無充填のプラスチック素材の中では最も優れた機械的強度を持ちます。耐薬品性にも優れ、ほとんどの薬品に対して耐性があります。優れた耐放射線性を持ち、電気・電子部品や航空機部品のほか、医療器具にも多く利用されています。

PPSU(難燃グレード:V-0)

耐候性が非常に優れた材質で、紫外線による劣化が起こりにくいです。光透過性が高く、紫外線から近赤外線までの広い波長範囲を透過します。連続使用温度は170℃で、高温による劣化もほとんど発生しません。

PI(難燃グレード:V-0)

連続使用温度が300℃とPEEKよりも高い耐熱性を持つ材質です。断続的であれば最高480℃の高温環境にも耐えることができます。-260℃までの極低温でも使用可能です。

遅燃性のプラスチック材質

難燃性グレードがHBの素材は自己消火性はありませんが、燃えにくい性質(遅燃性)があります。

材質難燃グレード連続使用温度
PMPHB115℃
PBTHB120℃~140℃
POMHB100℃
ABSHB55℃
ポリカーボネートHB120℃
PMMAHB90℃
紙ベークライトHB130℃
布ベークライトHB140℃
エポキシガラスHB180℃
MCナイロンHB品番によって異なります
6ナイロンHB70℃

PMP(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックPMP

ポリプロピレンと類似した高分子量炭化水素です。連続使用温度は115℃で、沸騰水中でも加水分解しないため、スチーム滅菌が可能です。一部の有機溶剤を除き、酸・アルカリに対して高い耐性があります。

PBT(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックPBT

連続使用温度120℃〜140℃のエンジニアリングプラスチックです。吸水率と熱収縮率が低く、寸法安定性に優れています。

POM(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックPOM

POMは機械的強度と耐摩耗性、耐薬品性に優れた、汎用性の高いエンジニアリングプラスチックです。加工性に優れ、低コストで入手可能なことから、さまざまな分野の部品に利用されています。

ABS(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックABS

機械的強度に優れた汎用プラスチックです。低コストで入手可能なことから機械部品や日用品までさまざまな場面で利用されます。耐候性が低いため屋外での利用には不向きです。

ポリカーボネート(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックポリカーボネート

プラスチック素材の中で最高レベルの耐衝撃性を持つ透明樹脂です。連続使用温度も120℃と高く、外装部品や保護カバーなどに利用されています。

PMMA(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックアクリル

光透過率が約93%とガラスよりも高い透明樹脂です。耐衝撃性もガラスより高く、割れた際も破片が飛び散りにくい材質です。耐候性に優れており、屋外で使用しても強度に大きな影響は出ませんが、変色することがあります。

紙ベークライト(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックベークライト

機械的強度、耐熱性、耐薬品性がバランス良く優れた積層材料です。強度は積層に対して垂直方向の力に優れており、水平方向の力に対しては欠けや割れが発生しやすいです。布ベークライトよりも安価です。

布ベークライト(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチック布ベークライト

機械的強度、耐熱性、耐薬品性がバランス良く優れた積層材料です。紙ベークライトよりも高価ですが、機械的強度はこちらの方が優れています。

エポキシガラス(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックエポキシガラス

ガラス繊維とエポキシ樹脂による積層材料です。ベークライトよりも機械的強度・耐熱性に優れています。硬いため、衝撃による欠けや割れが発生しやすい材質です。切削加工で発生する粉末が人体に悪影響を与えるため、加工会社は多くはありません。

MCナイロン(難燃グレード:HB)

難燃性プラスチックMCナイロン

物性がバランス良く優れ、コストも高くないことから汎用材料として広く利用される材質です。吸水性が高く、吸水・吸湿による寸法変化は起こしやすい特徴があります。

6ナイロン(難燃グレード:HB)

耐衝撃性と耐薬品性に優れた材質です。吸水率は高いですが、吸水により柔軟になり耐衝撃性が増します。自己潤滑性があり、摺動部品などに利用されます。

難燃性プラスチックの材質選定・切削加工はお任せください

湯本電機はプラスチックの短納期切削加工を行う部品加工会社です。
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